Loves Jack Jack Stories 石田衣良

物語とウイスキーは常に近いところにある。小説家の石田衣良さんも、バーとジャック ダニエルの体験は豊富だ。原体験的には米国のハードボイルド小説とザ・ローリングストーンズ。石田さんが好きだったものが、ジャック ダニエルと結びついていた。

石田衣良

「米国のレイモンド・チャンドラー(1888年〜1959年)などの小説の世界がジャック ダニエルの味にあると思っていました。ふわっと甘い感じで、しっかり強いっていう。あれが僕にとってのハードボイルドなんです。それを思いながら、よくバーでジャック ダニエルを頼んでいました。ロックのイメージもちょっとあるじゃないですか。ロックスターが飲んでいたりとか。僕はどっちかっていうと、ザ・ビートルズよりもストーンズ派だったので、ジャック ダニエルを好きになったんです」

酒場というのは、いつも暖かくて心地よいものだとしたのは、飲酒についての随想「ジョン・バーリコーン」(1913年)を書いた米国の大作家ジャック・ロンドンだ。時代も場所も違うけれど、石田衣良さんの作品にもバーはよく登場する。人が出会ったり別れたり、事件が起こったり平和が訪れたり。劇的なことが起こる場所でもある。

「お酒を直接描写するんじゃなくて、周りの状況を書いてあげて想像させるようなやり方がよいんですよね。樽の感じとかをうまく描写しながら、そこから出た1杯みたいなのを読み手に想像させるというのが。 “あのときおいしかった1杯”の記憶を呼びさますような描写がいいんですよね」

石田さんがバーの場面を描くのは、小説論的にも意味のあることなのだ。では、創作とウイスキーの関係はどうなのだろう。

石田衣良

「意外かもしれませんが、小説家は勤勉です。朝早く起きて明るいうちに仕事をして夜には終えてっていう人が多いです。でも例えば、開高健(1930年-89年)さんは書くときにものすごく苦しんで書いてるタイプなんで、苦しむ人は飲んで書いてますね。書いてるときはシラフだけれど、書いた後は飲まなければ、っていう人もいますね。それはよくわかります。神経がすごく張りつめるので、鎮めるために、ジャックの様ないいウイスキーを飲むといいんです」

創作の着想は頭の中からだけでない。五感のすべてが小説に繋がっていく。ジャック ダニエルは小説家である石田さんの重要なパートナーなのだ。ペンが走らないときは、インスピレーションを与えてくれ、ペンを走らせたあとは気分をときほぐしてくれる。

小説家が意識しなくてはならないことは、ウイスキー作りと似ている、と石田さんはする。

「小説にはバランスが大事で、書き手が書きたいものと、読者の求めているものとのバランスをどう取るかが大事です。同時に、今と過去とのバランスを取る必要もあります」

パッケージや新商品などに時代の好みを採り入れながら、自分たちの伝統の製法を守るジャック ダニエルと近いものがあるのでは、と石田さんは言うのだ。
ジャック ダニエルはそういうわけで、石田さんといい関係を結んでいるウイスキーである。さらにいえば、ジャック ダニエルが150年間愛されているのも、きっと同様にこのウイスキーを愛する人と、すばらしく良好な関係を結んできたからではないだろうか。

石田衣良
石田衣良
作家
大学卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターとして活躍。36歳で小説家を目指し97年に「池袋ウエストゲートパーク」でデビューした。2003年『4TEEN』で第129回直木賞受賞。現在インターネットを活用した新たな取り組みである、ブックトーク「小説家と過ごす日曜日」を毎月第2・4金曜配信中。
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